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事務屋のおぼえがき

少し遅れて堀江貴文「ゼロ」を読んだ

Kindle版で読みました。

堀江氏が他の著書で以前から言っていることと基本姿勢は変わりませんが、これまでの著書では書かなかったようなことを多く語っています。「堀江貴文の集大成」のような印象を受けました。傑作でした。


以下の章構成から見てとれる通り、全体にわたって「働くこと」について、圧倒的な仕事経験値の持ち主である堀江氏が言及しています。

  • 第0章 それでも僕は働きたい
  • 第1章 働きなさい、と母は言った──仕事との出会い
  • 第2章 仕事を選び、自分を選ぶ──迷い、そして選択
  • 第3章 カネのために働くのか?──「もらう」から「稼ぐ」へ
  • 第4章 自立の先にあるつながり──孤独と向き合う強さ
  • 第5章 僕が働くほんとうの理由──未来には希望しかない
  • おわりに


1.全体的な感想

まず「ラクをしながら成功する方法」を求めている読者に向けて、冒頭からこんな名言。

ゼロになにを掛けたところで、ゼロのままだ。物事の出発点は「掛け算」ではなく、必ず「足し算」でなければならない。まずはゼロとしての自分に、小さなイチを足す。小さく地道な一歩を踏み出す。ほんとうの成功とは、そこからはじまるのだ。

全編を通してこの「ゼロからイチ」の話が何種類かの角度で出てきて、話の一貫性を印象付けてくる。努力という言葉は使わないけど(努力と思ってないから)、努力の人なんだと再認識。掛け算はその後で、という話。


そして、会社を失い、社会的信用も失い、お金を失い、ゼロの状態で社会に戻った著者は「意外なほどすがすがしい」としたあとで、こう述べている。

「出所したホリエモンはなにをやってくれるんだろう?」
そんなふうに期待して下さっている方々に、僕はこう答えたい。
堀江貴文は、ただ働く、それだけだ。

著者自身もまたゼロから始めることを淡々とやっていく、ということか。

ゼロになることは、みんなが思っているほど怖いものではない。
失敗して失うものなんて、たかが知れている。なによりも危険なのは、失うことを怖れるあまり、一歩も前に踏み出せなくなることだ。これは経験者として、強く訴えておきたい。

この言葉は自己啓発本なんかにはありふれているのかもしれないが、個人的には堀江貴文が語っているという意味でとても説得力を持つ言葉だと思う。


著者はこれまでの自分の以下のような部分を反省しているという。

言葉で説明するよりも、目に見える結果を残すこと。余計な御託は抜きにして、数値化可能な事実を指し示すこと。曖昧な感情の言葉より、端的な論理の言葉で語ること。それこそが、あるべきコミュニケーションの形だと信じ切っていた。

世間から誤解されても自分は気にしないという態度。なんだかエンジニアや職人気質な人が陥りやすそうなところのようにも思う。自分もこの点で多く損をしていることを認識している。せっかくなので自分もそろそろ見直してみよう。


本書で初めて出てきた話はたくさんあるが、その中でも印象的だったのが「まったくモテなかった」という話。近鉄バッファローズの買収騒動のときも、女の子の前ではキョドっていたという。ただ、この裏話も下記に繋げるための布石であった。

仕事でも人生でも、もちろん異性関係でも、キョドってしまうのは、性格の問題ではない。ましてや、ルックスなど関係ないし、学歴や収入、社会的な地位とも関係ない。これはひとえに「経験」の問題なのである。

こういう「経験」に依るところの話になったら、自分だったら「じゃあこの問題に関しては時間に任せて、がんばって経験積むしかないよねー」とか言って終わってしまいそうだが、直後に著者はこういっている。

経験とは、経過した時間ではなく、自らが足を踏み出した歩数によってカウントされていくのである。

とても役にたつ考え方。

ほかにもKindle上でマーカー引いたところは多数ですが、キリがないので割愛。


2.個人的に気になったところ

個人的に興味深かったのは、企業後3~4年は堀江氏自身が一人で深夜のサーバ復旧作業などを対応していたという部分など。なかなかその辺の技術者時代の情報はなかったので新鮮であった。

あと、以前「成金」を読んでいたとき、登場人物の一人に「ちゃんとしたおたくになれなかったから東大生になってしまった」というおもしろい紹介のされ方をした「高松」というプログラマーがいた。

「成金」の登場人物は、営業マンにしろプログラマーにしろ、基本的には堀江氏の分身だろうなーくらいは想像していたが、「ちゃんとおたくになれなかったから」という部分は脚色かなという認識だった。

だが、この「ゼロ」でも学生時代の描写に「かといって、オタクになりきる勇気がない」などという表現がでてきたので、「高松」はそのまま堀江氏だったんだなーと認識できた。完全に余談。



3.まとめ

以上、ほんの一部だけかいつまんでの感想でした。
自分が新卒で初めて入社した会社で「働くということ」という本を読んで感想を書かされた記憶がありますが、自分なら新人にこの堀江貴文の「ゼロ」を読んでもらいたい。(…けど他の著書と同様「会社を辞めて起業すべき」調の部分も多いので単純にそうもいかない)


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