斎藤孝 オススメ本(6) 上機嫌の作法
- 作者: 齋藤孝
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/03
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タイトルから、「上機嫌であることは社会人としてのマナーの一つである」ということが述べられた本だろうと誰もが察すると思うが、中身もほぼその通りである。
私には、不機嫌さは「なんらかの能力が欠如しているのを覆い隠すため」だとしか考えられません。たとえば、無能さを突っ込まれないようにするため。あるいはお調子者だとかバカだと思われないようにするため。不機嫌であることが、あたかも威厳があり、知的であるかのように思うのは大きな勘違いです。
いちいち言い回しが説得力ある。
つまり、円滑なコミュニケーションのための手段として、「上機嫌」な状態を自分の「技」にすることを提唱したいのです。
他の著書でさまざまな「技化」を提唱している著者だが、上機嫌という状態さえも「技化」しようとしている。これは、著者自身が上機嫌を技化することを試みた結果、技化することに成功し、今に至っているからだという。
次に不機嫌を社会全体の問題として捉えている。
世の中にこれほど不機嫌が蔓延してしまった原因は、この「気遣う」ということをしなくなったからです。共存空間を心地よくするために、人を思いやる、場に対して気配りすると言った感覚を教えてこなかった、養ってこなかったがために、今やそれが当たり前であることすらわからなくなっている。そして、自分が不機嫌をさらしていることにも気がつかなくなってしまった。深刻な問題です。
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ところが、理不尽なことに、今の世の中は不機嫌な人に甘い。子供に何を尋ねてもまともに返事をせず、無愛想に「別に...」と答えるだけでも、親は文句を言えない。むしろ腫れ物に触るような扱いをする。社会でも、強面で権力の中心に座っているタイプ、気分を害するとやっかいだな、という人のほうが尊重される。不機嫌にしていたほうが、周りは構ってくれる風潮がある、これは明らかにおかしい。
このようなことは、社会に出たばかりのときには誰もが感じていることだと思う。だが、いつのまにかそのような人が存在するのは当たり前になり、いつの間にか自分がその「不機嫌」の座についているときがあることもある。
ただ、文脈は逸れてしまうが、個人的には組織に必ず一人はいる不機嫌なおじさんは嫌いではない。人に好かれようとしておらず、「仕事に集中させてくれ」「話しかけるな」というオーラを出す人は、逆に嘘がない気がして好きだ。(ただ本題の「不機嫌」のニュアンスとは若干違うのかも知れない。)
上機嫌と頭がいい状態とは両立します。気分をコントロールできるということは社会性があることだ、という意識を確固ともちましょう。不機嫌が癖になると、動きにくくなります。運動不足と同じように、こころの運動能力が下がってしまうのです。
このあたりから、「上機嫌/不機嫌」と「柔軟/固い」の関係が見え隠れしてくる。ここでは「こころの運動能力が下がる」と言っているが、このあと、物理的な身体の固さの話に。
四十代以上、特に四十五歳を過ぎた男性は、激しく不機嫌になります。中年と言われる年齢にさしかかった人たちは、実際には不機嫌ではないにしても、ふつうにしているだけで不機嫌に見えるという十字架を背負っているのです。
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一般にこの年代にさしかかった男性は、からだが硬くなり始めます。肩甲骨周りから首回りが硬くなって、横隔膜を揺すれなくなる。すると笑いにくいからだになり、「笑う」という人間にとって当たり前の動作が自然にできなくなるのです。
非常に興味深い。男が年をとるにつれて不機嫌っぽくみえるということは誰もが無意識に感じていたことではなかろうか。
自分を認めて欲しいという意識が過剰に強い人、いわゆる「自己チュー」に陥りがちな人が多く、自尊心を守りたいために自分に殻を作ってしまう。あるいは、人の意見に頷いたり笑ったりすることさえも、プライドが邪魔してできない。常に他者への競争心や嫉妬心に囚われ、他の人を素直に受け入れることができない。閉じているのです。他人との良好な関係を築くためには、からだもこころもオープンな構えにすることが肝心です。
肝に銘じよう。
線を引いた部分のほんの一部を抜粋しただけですが、以上は全て第一章の序盤からのみの抜粋です。以降もとても重要なことが多く書かれているので、一度は読んでおくべき一冊です。
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